現場から

 「世界難民の日こいのぼり」、岡山の空に舞う~難民の子どもたちの幸せを願い、難民支援の広がりを期待し……~

今、岡山で行われている「世界難民の日こいのぼりプロジェクト」をご存知でしょうか。このプロジェクトは、岡山を拠点として、鯉のぼりを製造・販売している「株式会社徳永こいのぼり」と、岡山在住の方々によってはじめられた共同企画です。「世界の難民の子ども達が幸せに暮らすことができること」を願い、みんなで力を合わせて作り上げました。この鯉のぼりは、6月20日の世界難民の日まで、岡山駅前とルネスホールに飾られています。

<プロジェクトメンバー>
代表:渋谷ザニー(ファッションデザイナー、国連UNHCR協会国連難民サポーター 

(広報担当)
共同代表:中嶋徳美(ルネスホール顧問)
幹事長:徳永夕子(株式会社徳永こいのぼり代表取締役)
顧問:逢沢一郎(UNHCR国会議員連盟会長)

デザインは、1993年に家族とともにミャンマーから政治難民として来日し、現在はファンションデザイナーとして活躍する渋谷ザニーさんが中心となって進めました。伝統的な模様である、七宝、青海波、紗綾形(さやがた)に加えて、手を組み合わせたUNHCRのロゴマークを生かしたデザインです。色は、国連カラーのブルーが使われています。岡山経済新聞の取材に、ザニーさんは、次のように語っています。

         https://okayama.keizai.biz/photoflash/4854/ (2022.5.2)

UNHCRのロゴマークには、両手で守られる人が描かれている。こいのぼりには手だけを描き、守らなければならない難民はもういない世界を表現した。

日本は豊かになったことで、こいのぼりを見上げ、希望や成長を願う習慣が薄れているように感じる。こいのぼりを通して、世界に波及させていきたい。

ウクライナ避難民の受け入れで、日本社会もやっと世界の避難民や難民への関心が高まってきました。今こそ、社会全体で難民問題を考えていくことが大切なのではないでしょうか。

出入国在留管理庁の発表では、2020年の結果は以下のように記されています。こうした実態を知り、その事実にしっかりと向き合う必要があると考えます。

   難民認定申請者数  3,936人(前年に比べ62%減少)

   審査請求数     2,573人(前年に比べ約50%減少)
   在留を認めた人      91人

※難民と認定した人47人,難民とは認定しなかったものの人道的な配慮を理由に在留を認めた人44人)

また、過去の推移も見ておきましょう(2年おき)。

     

     年      申請者数      認定者数    人道的配慮

   2010     1,202       39       363

   2012     2,545       18       112

   2014     5,000       11       110

   2016    10,901       28        97

   2018    10,493       42        40   

  

何度かUNHCRという言葉が出てきましたので、少し説明を加えます。UNHCR (The UNRefugee Agency:国連難民高等弁務官)は、国際連合総会の補助機関として、1950年に設立されました。また、ザニーさんがサポーターを務める「国連UNHCR協会」とは、UNHCRの活動を支える日本の公式支援窓口として、2000年に設立された団体です。

UNHCRの調査によると、2020年末現在で、世界で紛争や迫害によって移動を強いられている人々は8,240万人に上ぼります。https://www.unhcr.org/jp/global_trends_2020

また、18歳未満の子どもは、42%を占め、2018年から2020年の間に難民として生まれた子どもは約100万人いるというデータがあります。こうしたことからも、子どもが少しでもよい環境で成長し、幸せに暮らせるようにと、「子どもの日」に合わせて「こいのぼりプロジェクト」がスタートしたのです。

このプロジェクトを知った私は、早速プロジェクトに連絡を取り、徳永こいのぼりの永宗洋さんとメールでやり取りし、今日、ZOOMでお話をさせていただきました。

    ♪    ♪   ♪

永宗さんのお話によると、去年の秋のこと、ザニーさんは「鯉のぼり」文化について、こん

なことをつぶやかれたのだそうです。

  *鯉のぼりの見せ方って、いろいろあるんじゃないかなあ。

  *「子どもの日」だけじゃなくて、1年中ずっと飾っていてもいいんじゃないかなあ。

  *そもそも鯉である必要があるんだろうか。

まさに日本人には「当たり前」になっていることに対するクリティカルシンキングでした。

小さい時から日本で暮らし、2つの文化を持つザニーさんだからこそ生まれた「違う角度か

らの問いかけ」でした。ここから「徳永こいのぼり」との対話が始まり、「世界難民の日プ

ロジェクト」がスタートしたのです。

「鯉のぼり」が「鯉」であることには、古い歴史があり、そして、「鯉のぼり」には、親の

願いを託すという意味があります。そこで、難民の半分が子どもであるという現状を考え、

「難民の日」に合わせてメッセージ性のあるイベントをすることにしました。それは、「平

和への思い、難民の子ども達の健やかな成長」です。最初は、一企業とザニーさんとで始ま

った企画でしたが、もっと輪を広げていこうとUNHCR、そして岡山市にも相談をし、上述

したようなイベントとなりました。

永宗さんは、今後のことについて、次のように語ってくださいました。

  今後もぜひ「世界難民の日こいのぼり」の活動は続けていきたいと思っています。

  どういう形になるかは、まだ見えていませんが、もっと他の自治体との連携もほしいですし、

  難民問題の啓発になるようなことにつなげたいと思っています。

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