2014年に始まった明治大学山脇ゼミ主催「中野区長と留学生の懇談会」は、今年で10回目となりました。国際日本学部が中野キャンパスに引っ越したのは2013年4月、なんとその翌年から毎年「区長と留学生の懇談会」を実施し続けてきたことになります。今回の懇談会のリード文を紹介しておきます。
中野区では、2023年3月に「中野区多文化共生推進基本方針」が策定されました。同方針では、中野区の多文化共生推進にむけた取り組みの方向性を明らかにしています。
今回の懇談会では、酒井直人中野区長と台湾、スイス、中国、韓国出身の外国人学生と日本人学生の6名が「基本方針」をもとに、中野区の多文化共生のまちづくりについて議論します。
■テーマから見る10年間のあゆみ
まずは、10回にわたる懇談会のテーマの紹介がありました。スタート時は、「日本の中野から世界のNAKANOへ~グローバル都市を目指して」といったテーマでしたが、次第にテーマも「その時に社会が求めているテーマ」に集約されていきました。そして、今年は中野区に今年生まれた「多文化共生推進基本方針」がテーマ、懇談会の深化、広がりが見えてきます。
★2022.6 外国人住民への情報提供-多言語化とやさしい日本語-
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★2021.7ワクチン接種から考える外国人住民への情報提供の在り方
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★2020.7 コロナから考える緊急時の外国人住民への対応』(2020.7)
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★2019.7 外国人も日本人も住みやすいまちをめざして(2019.7)
■登壇者
登壇者は、6人の学生さんと、酒井中野区長と山脇教授です。酒井区長は、区長としての参加は2019年からですが、第1回から当時は中野区広報課長として、懇談会の開催に協力していらっしゃいました。
*ソン スヨン(韓国・明治大学、1年2か月)
*エイミス・ノア(スイス・明治大学、1年2か月)
*チョウ サンセン(台湾・明治大学、3年4カ月)
*チョウ シジュン(中国・イーストウエスト日本語学校、1年2か月)
*オウ コウリン(中国・イーストウエスト日本語学校、1年2か月)
*森 遥奈(日本・明治大学・17年)
■ゼミ生が調べた「都内自治体の多文化共生施策に関する調査報告」
懇談会のスタートにあたって、ゼミ生から以下の調査報告がありました。
1.都内自治体の取り組み 2.まとめ 3.中野区への提案
調査は、都内の5つの区と1つの市を対象とし、以下の4つの項目からなるものです。分かりやすくするために、表にしてみました。(※資料は、山脇さんから頂きました)
1.多文化共生指針/計画の有無
2.指針/計画策定のための有識者会議の有無
3.指針/計画策定のための外国人住民対象のアンケート調査の有無
4.指針/計画概要の多言語版/やさ日版の有無
■区役所のホームぺージについて
ホームページについては、さまざまな意見が出されました。
*区役所のホームぺージを意識していなかったが、今回見てこういうものがあると分かった。区ももう少し宣伝する必要があると思う。
*大切な手続きについては「やさしい日本語」で書いてあるが、他の内容はあまり易しくない。例えば、日本で就職したいので、税金を見たが、よく分からなかった。
*最初は英語などであっても、クリックしていくと日本語になってしまう。
*自動翻訳の精度が低い。英語は良いが、他のメジャーではない言語になるとかなりひどい状況だ。とても分かりにくい。
*やさしい日本語は、防災やゴミなどであとは、やさしい日本語になっていない。
*区役所に行っても、外国人にやさしい日本語で接している人は少ないという印象がある。職員向けのやさしい日本語のガイドラインはないのか。
→(回答)それはない。ただし、やさしい日本語の研修を受けている職員は結構いる。
■「家探し・地域社会との交流」という課題
家探しは、今でもなかなか外国人には貸してもらえず、何軒も回ってやっと見つけることができたという経験談が話されました。サポートセンターなどもあるようですが、なかなかそうした情報が当事者に入っていかないのが課題です。
また、SNSの活用に関してフェイスブック、ツイッターだけでなく、Whatappなどいろいろなものを使うとよいのではないかという意見が出されました。情報の発信の在り方は、これからも大いに進めていく必要があると思います。
ここで、来賓で参加なさっていた「中野秘密基地」を運営している山本さんからご発言がありました。シェアハウスとして活用していた古民家を改装して、「中野秘密基地」という名前をつけ、いろいろな人が来てくれる場所にしたと思ってやってきました。コロナで出来なくなっていましたが、今年1月から「子ども食堂」と「多文化共生」をめざして「たぬどん食堂」をやっているそうです。詳しくはこちらをご覧ください。
「なかの秘密基地」 http://himitsukichi.life/
懇談会スタート直後に、チョウさんは「私は中国語に興味がある日本人に中国語を教えたいです。自分の国の文化や言葉は伝えたいし、私の日本語にも役に立ちます」と言っていました。まさに外国人が主体的に自律的に社会に関わっていける仕組みが求められています。「多文化共生」から「多文化共創」に向けて進んでいきたいものです。
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「多文化共生のまちづくりと基本方針」というテーマを掲げた第10回懇談会は、留学生から活発に意見が出され、また、酒井区長からの率直なお答え、お考えがあり、とても有意義なものとなりました。今日のこの懇談会もそうですが、こうして住民の声を聞きながら、協働を大切にして進めていくのが中野区の魅力だと思います。
最後に、山脇ゼミの方々へのお願いです。次の10年に向けて、さらに広がりと深まりを求めて、人々を巻き込み、また、出来たら町を越え、区を越え、繋がっていってほしいと思います。新たな挑戦に期待しています。