7月2日(水)に、明治大学山脇ゼミと中野区主催の「中野区長と留学生の懇談会」が行われました。今年で12回目となりますが、初めて中野区役所ナカノバでの実施となりました。この懇談会は、山脇ゼミの皆さんがチームを作って学生達で作り上げていくイベントです。今年は、3年生(16期)の5人の学生さんが企画を担当し、入念に準備を重ねてきました。これまでの先輩の積み重ねを大切にしながら、毎年新たなテーマを見つけて実施する懇談会、今年の趣旨は次のように記されていました。
今年度の開催趣旨
中野区ではコロナ禍後に外国人住民の数が大きく増加しており、この傾向が続けば3年以内に全住民の1割を超える可能性sがあります。東京都全体でも同様の傾向にあり、日本社会も「外国人住民1割時代」に向かっていると言えます。こうした変化の中で、地域の多様性をどう受けとめ、共に暮らしていけるのかは、私たち全員にとっての課題です。
本懇談会では、中野区や近隣に暮らす留学生の声を聞きつつ、区長とともに中野のこれからを考えます。変わりゆくまちの未来を、共に見つめる機会としたいと思います。

この懇談会はハイブリッドでの実施で、会場には50名を超す参加者、オンラインでも大勢の方がご参加くださいました。これまでは明治大学中野キャンパスでの実施であり、「中野区役所ナカノバ」では初めての懇談会でしたが、山脇ゼミ総勢25名のみごとなチームワークにより、素晴らしい懇談会となりました。
■山脇ゼミによる調査報告~<中野区&新宿区&杉並区>から見えてくること~
今年は、中野区に隣接する新宿区と杉並区を取り上げ、1.外国人住民に関する統計、2.多文化共生基本方針、3.外国人相談、4.日本語教育、5.その他の取り組み、以上5つのポイントで調査をしました。
◆外国人住民に関する統計
*新宿区(2024.1) 43,897人 / 12.6%
(①中国 ②韓国 ③ネパール)
*中野区(2025.1) 24,632人 / 7.2%
(①中国 ②ネパール ③韓国)
*杉並区(2025.4) 22,827人 / 3.8%
(①中国 ②ネパール ③韓国)
◆多文化共生基本方針

中野区では2023年に、杉並区では2025年1月に「多文化共生基本方針」が公開されましたが、新宿区ではすでに2010年に「自治基本条例」が出され、「しんじゅく多文化共生プラザ」を軸に、多様な取り組みがなされています。すでに外国人住民が1割を超える新宿の取り組みは、他の区にとっても参考になることが多く、こうした他区の状況を知ることは、大いに参考になります。
◆日本語教育
今、日本語教育の重要性が叫ばれていますが、新宿区は、1993年から「子ども日本語教室」「初級者向けの教室」がスタートし、9カ所14教室が運営されています。そこには、しんじゅく多文化共生プラザの存在が大きく寄与していると言えます。
また、中野区は1989年に中野区国際交流協会が日本語教室を立ち上げ、2002年には子ども日本語クラスのスタート、さらに今年からオンライン講座も始まりました。
杉並区は、2023年に子ども日本語教室が始まり、小学生教室は交流協会、中学生教室は教育委員会が運営。さらに、今年11月からはゼロ初級の大人日本語教室が始まることになっています。
このように日本語教育の取り組みは、3つの区で大きな違いがありますが、今後外国人住民1割時代を迎えるにあたって、日本社会全体で真剣に向き合っていかなければならない課題であると考えます。
■調査報告をもとに「中野区への提言」
最後に、こうした調査報告をもとに、中野区に対して6つの提言が提示されました。
1)多文化共生に関する外国人・日本人住民調査の実施
2)外国人区民も参加できる多文化共生区民会議の設置
3)区役所での住民参加型の日本語教室の実施
4)相談方法の多様化(メールやオンライン相談の実施)
5)中野の多文化共生をテーマにしたショート動画の募集と発信
6)中野のまち歩き交流イベントの開催(山脇ゼミ企画)
ゼミ生の提言は、どれも外国人住民の社会参画を促すものであり、ぜひ実現してほしいものです。また、隣接する杉並区と協働で実施できると、さらに広がりが生まれるのでは……と思いながら、聞いていました。
■パネルディスカッション
第2部では、山脇教授をファシリテーターとして学生さん達が酒井区長に意見を述べていきました。登壇した学生さん達は、以下の通りです。


「中野の良いところ、好きなところは?」から始まり、「中野がもっとこうだったらいいと思うことは?」と話が進んでいきました。課題、そして希望について少し取り上げてみたいと思います。
【課題】
*健康保険の手続きが複雑で時間がかかる。もっと便利になったらよいと思う。
*健康保険の延長が必要だったときに、案内がこなかったため、困った。
*毎週のようにいろいろな手紙が来るが、日本語が難しい。また、枚数も多く大変。
もっと簡単にしてほしい。書類を少なくして、やさしい案内にしてほしい。

*マイナンバーのことが、よく分からない。
*引っ越しの際、ガス・水道・電気の手続きが大変だった。
【改善を希望すること】
*情報をシンプルにする。同じ場所に集めてほしい。
*ウェブサイトの翻訳(ロシア語)がおかしいので、きちんとした翻訳にしてほしい。
*手続きを簡単にし、また、やさしい日本語で書いてほしい。
*手続き関連の案内をきちんと送ってほしい。
*日本人の友達がほしい。
*来たばかりの人に対して、もっとサポートしてほしい。
♪ ♪ ♪
終わってからは、区役所内の「カフェテリア:ナカノヤ」で懇親会がありました。区長、登壇した学生さん達に加え、明治大学と関わっているさまざまな人々が参加。いろいろな話で盛り上がりました。こうした多様な人々が集い、対話を重ねる場は、とても大切です。そして、日本人学生が最後に述べた「日本人の意識が変わる必要がある」ということばを改めて噛みしめていました。
※写真掲載の許可は頂いてあります。
