12月4日(水)、明治大学山脇ゼミ主催の「なかの多文化共生フォーラム」が実施されました。9月末から指導教員の山脇さんがサバティカルでオーストラリアにご滞在という状況下、ゼミ生が主体的に動き、力を合わせて企画・交渉・運営に関わってきたフォーラムです。練られた企画、みごとな進行で、参加者の心をつかんでいきました。
プログラムは以下のとおりです。
第1部 山脇ゼミの活動報告
第2部 「災害時の多文化共生」に関するトークセッション & ミニワークショップ
■数々の今年の活動報告~やさしい日本語ワークショップを軸として~
まずは、活動報告を列挙してみましょう。いかに多様な活動をしてきたかが、よく分かります。
①群馬県 公民館職員向けワークショップ
②中野区長と留学生の懇談会
③杉並区立新泉和泉小学校 小学生向けワークショップ
④静岡県主催 多文化共生フォーラム
⑤なかの生涯学習大学との合同ゼミ
⑥中野区役所職員向けワークショップ
⑦GTN社員向けワークショップ
⑧横浜市立学校教員向けワークショップ
⑨MORE&横浜市中区くらし案内動画
⑩豪州合宿
⑪中野にぎわいフェスタ
⑫東京都主催プレゼンコンテスト
とくに、ゼミ生による「やさしい日本語」ワークショップ関連は、回を重ね、またどんどん対象者が広がっている点が素晴らしいと思います。また、活動範囲の広がりにも、目を見張るものがあります。国内での広がりに加え、今年は、山脇さんの滞在先のオーストラリアに出かけての合宿。「指導教官の留守」をマイナスに捉えず、常にZOOMで連絡を取り合い、さらには、自分達で出かけていくとは、なんという行動力でしょう!
■最優秀賞を手にしたプレゼンコンテスト~<東京都をやさニティに!>
11月24日(日)に行われた東京都主催プレゼンコンテストでは、<東京都をやさニティに!>をテーマにプレゼンを行い、みごと昨年に続き、最優秀賞に輝きました。今回は、私も2回、明治大学に出向いて、アドバイスをする機会がありました。
そこで、驚いたことの一つに、1回目、2回目と、どんどんアドバイスをしっかり受け止め、どんどん進化しているのです。「ああ、私も本番に行きたい!」と思ったものの、名古屋出張と重なり叶いませんでした。その日の夜、「最優秀賞を受賞しました!」という連絡をもらい、とても嬉しく思っていました。
また、新たなインパクトのある造語力もさすがです。「やさしい日本語」と市民をかけて<やさしみん>、「やさしい日本語を使うコミュニティ」については<やさニティ>と名付け、プレゼンは展開していきます。最初聞いたときは「やさしみん?一般的にうまく受け入れられるだろうか」と思ったものの、しだいに短いことばに込められた思いがしっかり伝わってきました。
プレゼンは、東京都に多文化共生の視点から「提言する」ことが目的です。ここでは、実際に今年1年行ってきたことも入れ込み、普段からの住民同士のおつき合いの大切さを伝えていきました。そのためには、東京都だけで9000あるという町会・自治会を活性化させることが重要で、そこに外国の若者たちも入ることで、やさニティの実現につながるというのです。
<中野区を「やさニティモデル地区>にしよう!>
中野区を中心に活動する山脇ゼミの想いが込められたプレゼンでした。
■第2部 トークセッション<災害時の多文化共生を考える>
第2部のリード文は、次のように記されています。
「災害時の多文化共生」
南海トラフ地震に対する注目が集まる今日、「災害時における多文化共生」に関する課題を取り上げます。災害時に誰もが自分の命を守り、異なる文化を有する人々と助け合うまちを作っていくため、我々はどう行動していけば良いか、参加者の皆さんと一緒に考えます。
第2部トークセッションのスピーカーは、次のお二人です。モデレーターは私が務めさせていただきました。
*カブレホス・セサルさん(ランゲージワン株式会社 執行役員)
*君塚充利さん(中野区総務部 防災危機管理課 防災対策係長)
テーマは、以下のとおりです。
(1)<過去>東日本大震災の時は、どうだったか。
(2)<現在>その時と比べて、今は、どう変わってきたのか。
(3) <未来>多文化共生という視点で、今後災害時には、どのようにしていくべきなのか。
実は、報告⑫プレゼン<東京都をやさニティに!>に、このトークセッションのテーマで挙げるべきキーワードが詰まっており、3人とも開始直前に「あのプレゼンのメッセージそのものが、このセッションの結論ですね」などと語っていたのです。
■「過去・現在・未来」の軸で語る「災害時の多文化共生」
①<過去>
セサルさんからは、あまり日本語ができなかった奥様の体験談が紹介されました。
・地震とは思わず、「テロ爆発事件」だと思った(ペルーではリマで多発していた)。
・小学校が避難所になっていることを知らず、自分だけ子どもさんを連れ出した。
(全生徒が校庭から校舎に戻っているにもかかわらず……)
・子どもと一緒に、コンビニ駐車場で夜10時まで待機。買占めが始まったことを知った時には、時すでに遅しで、飲み物とお菓子のみ購入。
君塚さんは、当時も防災担当で、帰宅難民の対応にあたり、避難所に毛布などを用意し、一晩
泊まってもらうなどの対応をしたことについて話してくださいました。
②<現在>
セサルさんは、いろいろな面で進歩してきているけれど、課題として、情報提供をどれだけ迅速
にできるか、コミュニケーションツールの準備の重要性などについて語ってくださいました。
それを受けて、君塚さんは、中野区の取り組みについて報告してくださった後、災害時を取り上
げることも大切だけれど、住民同士普段からの付き合いが大切であることを強調されました。
③<未来>
セサルさんは次のようなメッセ―ジがありました。
・外国人は日本人とは文化が異なるため、防災の意味でも違いがあることを理解してほしい。
・普段から、近所の高齢者の確認とともに外国人がいることも確認してほしい。
・災害発生時に、困っている外国人を見かけたらぜひ声をかけてほしい。
君塚さんは、外国人に地震のイメージを持ってもらうことの大切さ、普段から「近所には、どんな人がいるのか」とお互いに知り合うことの大切さについてお話がありました。
* * * *
災害時には<ことば、こころ、制度>という3つの壁に、<文化、経験>を加えた5つの壁があると言われています。避難所で給水車が来たときに、やさしい日本語で「水をくばる車がきました。水がもらえます」とアナウンスしても、取りに行かない外国人が大勢います。「水はお金を出して買うもの」という文化の人には、「お金はいりません(ただです)」と付け加えることが求められると言えます。
■第2部 多文化防災ロールプレイ
このコーナーでは、グループに分かれて、仙台観光国際協会が作成した「多文化防災ワークショップ ケーススタディ」を使ってロールプレイを楽しみました。ロールプレイを実施した後、
・役割の人になったときに、どんな気持ちになったか。
・今回のシナリオを読んで、どう思ったか。
・どうすればシナリオにあるような摩擦やトラブルが防げるか。
などについてグループで意見交換をしたのち、全体シェアとなりました。
こうしたロールプレイがアチコチで行われることによって、災害時における他者への配慮、避難所でのあり方などを考えることができると言えます。
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山脇ゼミの活動は、これからも進化を続け、深化し続けることでしょう。そして、こうした活動を通してつながった「人の輪」が、さらに広がり、アチコチで新たな取り組みが生まれていくことを願っています。
※写真は、山脇ゼミより提供していただきました。