◆PDF⇒ https://acrasweb.jp/wp-content/uploads/2024/06/想いを語る高校3年生.pdf
6月17日、高校3年生のマシュー君が、アクラスに来てくれました。マシュー君とは、5月にあった「杉並区の区政を話し合う会:聴っくオフ・ミーティング」で出会いました。そこで彼が語ったことに感動し、ぜひお会いしたいと考えたのでした。まずは「聴っくオフ・ミーティング」について説明することにします。
■杉並区<区政を話し合う会「聴っくオフ・ミーティング」>とは
5月25日(土)に、杉並区で区政を話し合う会「聴っくオフ・ミーティング」がありました。「聴っくオフ・ミーティング」に関しては、杉並区のサイトに次のような説明があります。
日頃、区との接点の少ない若い世代の方々を含めた幅広い世代の声を受け止めていくために、区民と区長が、その時どきの行政課題をテーマとして直接意見交換を行う「聴(き)っくオフ・ミーティング」を開催しています。
2022年6月に岸本聡子区長になってから、これまでに以下のような「聴っくオフ・ミーティング」が開催されています。
令和4年 ・杉並らしい子どもの居場所づくり
・人と環境に優しい自転車の街・杉並
・これからの杉並らしい防災を考えよう
・杉並区立学校の『給食無償化』を話し合おう
令和5年・ふるさと納税を考えよう
・皆さんの公共施設のこれから
・気候変動対策、待ったなし
・杉並のみどりをどう守る?どう創る?
令和6年・みんなの公園を気持ちよく使うには?
・多文化共生ってなに? 外国人から見る杉並を話し合おう!
■今回実施の聴っくオフ・ミーティング<多文化共生ってなに?>
ミーティングは、午前部と午後部、それぞれに区民が応募し、同じテーマで2時間半実施されました。応募した区民から抽選で選ばれた20人の参加者は、5つのグループに分かれ、今回は「多文化共生」がテーマであることから、各グループに1人ずつ杉並区に暮らす外国の方に参加していただき、5人1組でグループ討議を行いました。区長がテーブルを回って、参加者の話に耳を傾けておられました。私は、今回、グループ討議の前に情報提供者として、「現場から『多文化共』」を考える~活気ある地域社会をつくるために~」というタイトルでお話をさせていただいたことから、各グループを回ってお話を伺う機会に恵まれました。
最後は、全体で集まって、<一人1分程度で思い/具体的な提言など>を語る時間です。そこでは、さまざまな率直な意見が出されました。区民の声をじかに聴くのは、本当に大切なことだと改めて思いました。
ボランティアで各グループに入ってくださった外国の方の出身国・地域は、実にさまざまです。
午前の部:カナダ・韓国・ネパール・インド・アメリカ
午後の部:ウクライナ・ネパール・台湾・スリランカ・ベトナム
なお、「聴っくオフ・ミーティング」のレポートと動画(午後の部)は、杉並区のサイトにアップされていますので、以下のURLをご覧ください。
https://www.city.suginami.tokyo.jp/greetings/meeting/1077752.html
※レポートは、後日掲載されることになっています。
■「ダイバシティ・ダイニング」を提案した高校生のマシュー君
午前の部のグループ討議でテーブルを回っていた私は、あるグループでマシュー君という高校生に出会いました。高校3年生のマシュー君は、このミーティングがあることを知り自ら応募し、参加したのです。また、彼は「モサクラブ」という団体を立ち上げ、仲間と一緒に活動を始めていました。こうした高校生の行動力、杉並区を思う気持ちに、参加者はみな感動!
「聴っくオフ・ミーティング」の最後の<一人ひと言>タイムで、彼が「ダイバシティ・ダイニング」を提案したとき、私はマシュー君がどんな思いで提案したのか、さらにどんな活動をしようと思っているのか知りたいと思いました。そこでアクラスに来ていただいて対話を重ねました。
シェアスペースとしてキッチンを作るといいと思います。そして、毎週違う国の食材でキッチンをいっぱいにする。その食材で作った国の料理を出して、みんなで一緒に食べる。そういうことができるスペースがほしいです。それは、外国人にとっては、(いろんな国の人たちと)横のつながりができる場所、2.より強い安心感を持つことができる場所、3.日本語を使っていろいろなことを話して、発散できる場所、4.交流の場で、同時に「居場所」になる、といったメリットがあります。
日本人にとっては、異文化に触れることで、寛容性を身に付けられる場所、2.さまざまな国の人たちと触れ合うことで、「日本人としての自分」ではなく、「〇〇人ではなく<個人の自分>」、自分自身の「アイデンティティ」にしっかり向き合うことができる場所になると思います。
私の中にも、いろいろな構想が湧いてきました。杉並区でやっているさまざまな活動が点ではなく、線でつながり、やがて面になっていくことで、きっと新たな形の「出会いの場/対話の場/協働の場」が生まれていくことでしょう。
■高校生と大人が繋がるプラットフォーム「モサクラブ」
マシュー君が「モサクラブ」を始めたのは、みんなでいろいろなことを模索したいと考えたからでした。SNSの普及などで、今の若者は受け身の姿勢となり、短期的なことに慣れてしまい、長期的に物事を見ることを忘れてしまっているとマシュー君は語り始めました。そうした状況を憂え、「模索」を大切にしたいと考え、今年3月に「モサクラブ(MOSAKU LOVE)」という団体を立ち上げたのでした。
実は、マシュー君は小学校5年の時、今回一緒にモサクラブを立ち上げたお二人の方と出会いました。その方々と今年1月に5年ぶりに再会し、熱い思いを語ったところ、「じゃあ、マシュー君の想いを実現させよう」と、一緒に団体立ち上げを始めてくださったのだそうです。まさに<人との出会いが若者の人生を変える!>、ですね。
こうして始まったモサクラブで一番やりたいことは、教育プログラムだそうです。それは、中学の時に出会ったキャリアカウンセリングがきっかけでした。
内省的に自己理解を深めていくことで、将来の道を考えることができます。そういう教育の流れができると、長期的な、持続可能な、再現性のある考え方ができるようになります。それが若者には大切です。
こう語るマシュー君は、最近「学生ミーティング」を立ち上げました。将来やりたいことを言い合って、率直に意見を出し合っていく会にしたいと考えています。模索……それはまさに「生きる道」をともに考え、語り合うことなのだとマシュー君は語ってくれました。
■「ナッジを探す」という活動
モサクラブの第1回の活動は、<「ナッジ」を探す散歩>でした。実施報告には次のように記されています。
「ナッジを探す」というルールを入れ込んで散歩するだけで、いつもの通学路が全く違うものに見えた。『世界は「見方」を変えるための「知識」の数だけ広がっている』それを実感するために、1か月の間準備を進めてきて本当によかった。
この活動は、町に何が生み出せるかを考えることが目的です。そのためには、全体・細部を客観的に見て、論理的に考えることが求められます。一方で、幼児からお年寄りまでどの世代についても考慮することが大切で、人々の気持ちを汲み取ることも求められてきます。そういう意味で、とてもやりがいのある活動であり、これからも進めていきたいと、マシュー君は熱く語ってくれました。
インスタグラムの「モサクラブ」紹介には、「杉並区の問題を発見し改善することや、まだ見ぬ魅力の発信を目的に、学生と社会人がゆるやかに繋がるプラットフォーム『モサクラブ』を立ち上げました」と記されています。さあて、これからどんな新しいことが始まるのでしょうか。若者の柔らかくしなやかな思考、熱い想い、軽やかな行動力に、大いに期待しています。
■若者がいきいきと活動できる地域社会に!
マシュー君と語り合った時間は、珠玉の時間となりました。キラキラ目を輝かせながら、高校3年生の自分が「今できること」、大学進学への道、将来やりたいこと等々、さまざまなことを語ってくれました。将来やりたいことは、キャリアカウンセリングであり、人が育つことに、ずっと関わり続けたいと思っているそうです。そして、杉並区はいろいろな意味で安心できる所だけれど、足りない点として「高校生の遊び場が足りない。集会場、個室などがもっとあれば、みんなで話し合える場ができる」と、伝えてくれました。
今の若者がいきいきと活躍できるよう環境づくりをするのが大人の役目。いったい私には何ができるのでしょうか。せめて彼らの活動をしっかり理解し、発信をし、ネットワーク構築のお手伝いができたらと考えています。
マシュー君は「私は、まだまだ井の中の蛙です。だから、いろんな大人と話をしたい。そうすることで、自分達が成長できますから」と、最後に伝えてくれました。まずは多様な人々との対話が求められているのだと、改めて思いました。
その日の夜、マシュー君からのメールには、次のように書かれていました。
先ほどはありがとうございました!
自分のやりたいことを再認識するいい機会になりましたし、何よりモチベーションがぐんと上がりました!
これからもよろしくお願いいたします!
<17歳と77歳の語り合いの時間>は、双方にとって大きな力が湧いた貴重なものとなりました。
参考:モサクラブ https://www.instagram.com/mosakulove/
「モサクラブ」の活動に関する写真