現場から

山口県立大学での「言語政策から見た日本語教育の現状と課題」~さまざまな方々との出逢いを通じて思うこと~

12月13日、山口県立大学の2年生を対象に、「言語政策から見た日本語教育の現状と課題」というタイトルで、講演を行いました。当日は、国際交流協会の方や他大学の方もご参加くださり、終わってからもとても良い交流の場となりました。また、大学生からの講義コメントもとても素晴らしいものでした。

■山口県立大学による官学地域連携事業~さまざまな小中学校との連携を通して大学生が学ぶ~

山口県立大学では、林炫情教授のもと、2022年度からいくつもの小中学校、教育委員会と対話を重ね、日本語指導を必要とする児童生徒に対する遠隔・オンライン日本語指導をスタートさせました。今回、「多文化共生社会における教育課題解決を目指した官学地域連携によるオンライン日本語指導」という取組報告書をいただきましたが、それを見て、いかに多くの学校と関わっているかを知り、驚きました。この事業は始まったばかりですが、これからの発展がとても楽しみです。

  

ここで、「はじめに」から林さんのメッセージを一部紹介することとします。

本取組に参加した日本語指導サポーターは「日本語教育実践演習」の21名の学生です。初年度ということもあり、スタートから色々試行錯誤しながらの展開となりましたが、県内の外国にルーツをもつ児童生徒の現状と課題を知り、また自分自身も多文化共生を担う当事者として、どのように地域に向き合うべきなのかを学生達と一緒に悩み、考え、微力ながら実践できたことは私にとっても大きな学びとなりました。

最後のページには、山口県国際交流協会の浅田さんが、次のように述べておられます。

前略……現在、当協会でも、外国につながる子どもの日本語学習支援に関する講座を開いておりますし、地域でも子どもたちの日本語学習を支援する取り組みが広がってきております。今後も、県や市町、関係団体等と連携しながら、外国につながる子どもの日本語学習だけでなく、保護者への情報提供等を含めて、家族で安心して生活できるよう、多方面からの支援に取り組んでいきたいと思っております。

関係者間の連携、とても大切ですね!

■山口県国際交流協会の取り組み~人がつながり、活動を広げる山口~

次に、山口県国際交流協会の取り組みについて、述べたいと思います。浅田さんから「令和5年度外国人住民のための日本語教室」に関するリーフレットをいただきました。日本語教室は全県で19教室、それぞれ特徴を生かして活動しています。散在地域が多く存在する山口では、まだまだ教室は足りませんが、活動をしている方々のつながりの強さ、多様な機関との連携等が特徴の一つだと感じました。

詳しくはこちらをご覧ください。

/https://yiea.or.jp/wp/wp-content/uploads/2023/05/5b8a12afe2c768ea8d277cfe8761a108.pdf

  

■「青年海外協力隊山口県OB会」が始めた2つの取り組み

~「こどものための日本語教育」&「子ども支援PBLプロジェクト」~

「青年海外協力隊山口県OB会」は、2年前、「こどものための日本語教室」をスタートさせました。まずは、チラシに書いてある説明をご覧ください。

当会では、2021年3月から山口市において、外国にルーツを持つ子どものための日本語教室を開催しています。

 最初は数名が来るだけだったこの教室も、今では山口市5会場、防府市1会場、オンライン指導と、子どもたちのニーズや状況に合わせ、多様になってきています。

 山口県は外国人の散在地域のため、外国にルーツを持つ子どもが学校で1~2名しかいらず、現場も手探り状態ということも多くあります。

 さらに日本語指導を必要とする児童生徒は年々増加しています。……後略

JICAの仲間が、今、みんなで力を合わせて「外国にルーツを持つ子どもたち」の支援に取り組み、輪を広げているのは、本当に素晴らしいことですが、実は、もう1つ「子ども支援PBLプロジェクト」も実施していると聞いて、びっくり!

このプログラムでは、子どもを支援する様々な活動現場で、自分にできることを探し、考え、実践するPBL(Project Based Learning:課題解決型学習)が体験できます。活動に参加するだけでなく、事前勉強会で子どもの支援の基本を学び、メンターや講師と相談しながら取り組むので、より一歩踏み込んだ活動につなげていきます。

対象は、山口県内の高校生、大学生、そして20~30代の若者です。こうして子ども教室を主宰するだけでなく、そこに若者も関わる仕組みづくりをし、実行している点が素晴らしいと思いました。

■山口県立大学での講義の紹介~大学生の学びに触れ・・・~

私の講義の項目は、以下のとおりです。

   1.日本語教育の揺籃期からこれまで~留学生教育、地域日本語教育を例として~

   2.法制化へのプロセスと現状~それぞれの思いと連携~

   3.「推進法」制定後の動き~日本語教師の国家資格化までの道のり

   4.さまざまな事例から学ぶこと~「ともに社会を担う仲間」として~

実は、日本語教員養成課程を取る前の大学2年生を対象にして、こうしたタイトル、内容のお話をすることはあまり多くありません。普段は、もう少し一般的な内容のものになるのですが、今回は林さんより「言語政策」を軸にしてほしいということで、実施しました。

学生さん達は、非常に熱心に90分の授業を聞いてくださり、終了後「学習の記録」を提出してくださいました。詳しく書かれたものからワンセンテンスを切り取ってお伝えするのは残念ですが、いくつかご紹介したいと思います。「小中学生など若い世代に「日本語教育」について伝えるためにも、教科書にその取り組みについて載っていても良いのではないか」といった具体的提案もあり、私にとっても大学生の方々の「学びの記録」シートを拝見することは、大きな学びとなりました。

        (※林教授に許可をいただいてあります)

      ♪     ♪     ♪     ♪     ♪

 *日本語教育が対外的な政策と切り離せないものであることが一番印象に残っている。

 *在日ブラジル人の推移の変化が印象に残った。これからの日本がどのように外国人に対する言語支援を行うのかが気になった。

 *昔から多くの留学生が来ていたのではなく、さまざまな取り組みが行われた上で着々と数が増えてきたことがわかった。グラフからたくさんの情報を読み取れることが分かり、おもしろかった。

 *日本語教育についての国民の理解と関心の促進が重要だと聞き、自分自身も含め肝に銘じておきたいと思いました。

 *法律をつくることで、地方自治体や国といった多くの組織を巻き込むことができ、当事者意識を持たせることができるなと思いました。

*過去の歴史から多くのことを学び、私たちにできることを全力でやっていきたいなと思いました。

*学びを受ける権利は誰にでもあり、それは妨げられるべきものではないため、国はしっかりと考えを持ち、きちんとサポートを行うという姿勢を持って行くべきであると思った。

*何ごとも思うだけでなく、声に出して訴えることが大切だという言葉に、とても印象を受けました。

*言語教育観の3つの柱で「学習者を社会的存在として捉える」という部分にはっとしました。

*私は今回の講義は初めて知る内容ばかりであったため、小中学生など若い世代に「日本語教育」について伝えるためにも、教科書にその取り組みについて載っていても良いのではないかと感じました。

*「学習者自身には学力はある。いかに寄り添ってサポ―トできるか」日本語学校だけでなく普通の学校でも非常に大切な部分だと思いました。

■山口県立大学のホームページに載ったブロブ記事~発信、対話、協働をめざす大学の姿勢~

講演が終わった2日後、「ブログ記事」が送られてきました。なんと広報担当の方が講演会に参加し、すぐに書いてくださったのだそうです。このスピード感、また私が伝えていただきたいことを端的に書いてくださっていることに感動しました。

       ◆    ◆   ◆

山口県立大学のホームページのブログ記事

「言語政策から見た日本語教育の現状と課題」国際文化学部 日本語教育関連外部講師による講義 No. 9」
https://www.yamaguchi-pu.ac.jp/au/ri/blog/2023/12/blog202312141540.html

<イントロ>

  2019年の「日本語教育の推進に関する法律」制定を皮切りに大きな変化の中にある日本語教育がどのようなプロセスを経て今日に至ったのか。そして今後どのように取り組んでいくべきかということを、国際文化学部2年生の学生たちにお話しいただきました。

<見出し>

  *日本語教育の揺籃期からこれまで

  *法制化へのプロセスと現状

  *日本語能力のレベルについて考えてみる

  *「ともに社会を担う仲間」として

  *「思う」だけでなく、仲間とともに活動して欲しい

               🎵   🎵   🎵

お土産に、林さんがお書きになった韓国語の教科書をいただきました。長い間韓国語学習から離れていた私ですが、「さあて、新年はもう一度・・・」と思いながら、新幹線に乗り込みました。

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