現場から

2022年度 東京都ダイバーシティ・プレゼンコンテスト~長い時間をかけ、チームで作り上げた「都への提案」を込めたプレゼン~

11月20日(日)、東京国際フォーラムで、5つの大学生チームによるプレゼンコンテストが行われました。このイベントのテーマは、以下のとおりです。

   ダイバーシティー&インクルージョン~大学生が考える東京の未来~

このイベントは「東京都主催:ヒューマンライツ・フェスタ東京2022」の一環として行われています。開催趣旨は、次のように記されています。

様々な背景や価値観を持つ人が、違いを認め合いながら共に交流し、支え合う共生社会「インクルーシブシティ東京」を実現するために効果的な取組は何か、都内大学生が提言することで、都民の多様性の尊重への関心を高める。

それぞれ素晴らしいプレゼンでしたので、チームごとに報告したいと思います。

■留学生チーム:めしあがれ!TOKYO「世界食」プロジェクト

 留学生チームと一緒に

3人のメンバーは、それぞれ違う大学・大学院に通う留学生で、どこかのゼミ生として参加したわけではありません。何をするか自分達で考え、準備を進めていきました。マップを作るという発想は、メンバーの一人が8月に四国お遍路さんをしたことが原点だったそうです。全員が中国出身ということで、中国と食との関係を「民は食をもって天となる」の言葉から始めました。

「世界食」としたのは、例えば中国料理を中国人が日本人に伝えるというのではなく、ともに考え、言語化し、それを多くの人に伝えていくことを大切にしたからなのです。当たり前になっていたことを話し合うこと、例えば「四川料理が辛いのはなぜ?」「讃岐うどんが有名なのはなぜ?」と問う直すことで、新たな気づきがあります。

プロジェクトは、「TOKYO世界食マップ」を作ることを提案し、多様なアイディアを披露してくれました。大学院で学びながら、自らのお店をやっているというシェさんの提案は、実践に基づく貴重なものでした。そして、SNSで知り合ってこのコンテスト参加を決めたという3人が実に楽しそうに、すてきなチームワークで話してくれたことがとても印象的でした。留学生チームは、みごと優秀賞を獲得しました!

■明治大学チーム:インクループ

明治大学は、「第三者返答」をテーマにしてのプレゼンです。「インクループ」とは、「インクルーシブグループ」を訳した言葉です。このグループは、外国住民の増加、173万人という外国人雇用、また「日常生活に困らない程度以上の会話力」を有する割合は82.2%という法務省の調査結果を示すなど、データを提示してのプレゼンは、説得力がありました。

その上で、あまり聞きなれない「第三者返答」を取り上げ、聴衆に自らの行動を振り返る流れにもっていきました。そこでの提案は、「第三者返答ワークショップ」の実施です。40分のWSは、<クイズで学ぶ → 動画を視聴する → ロールプレイで体験する → 課題発見と解決策を探る → アンケートを取る>といった流れになっています。

さらに、このチームでは、自分達の2023年度の実施計画についても詳細に挙げていました。その内容は、高齢者施設、区役所、高校、会社とさまざまな所での実施です。こうした次年度実施計画が可能になるのは、これまでの先輩達の活動による地域社会や各種機関とのつながりがあると言えます。明治大学チームは、みごと今年も最優秀賞を受賞しました。

  ※「第三者返答」に関しては、こちらをご覧ください。

■法政大学チーム:カラフルこども食堂を広めよう!

法政大学チームは、外国につながる子ども達の居場所づくりに注目しました。その背景には、外国につながる子ども達の増加、不就学などの課題があります。特に、2017年に起こったナガトシ・ビアンカ・アユミさんの事件を取り上げ、「居場所があったら、救えたかもしれない」と訴えました。

また、子ども食堂が全国的に増え続けていることから、既存の活動に新しい機能を持たせることで、子どもたちにさらに意義あることができるのではないかと考えました。その機能とは次のとおりです。

   *子ども達の多文化交流   *子ども達の学習支援   *ロールモデルとの架け橋

さらに多言語スタッフの確保や、ネットワーキング、拠点となる子ども食堂を作ることなど課題を挙げ、広報の重要性についても語っていました。こうした大学生による提案を、みんなの力で実現させていきたいものです。

■東京女子大学チーム:ありたい しりたい つなげ隊

東京女子大学チームと一緒に

東京女子大学チームは、3つの今やっている活動「ケア24善福寺マップ配り/こども食堂/ハロウィン」等についてのプレゼンです。まずは、高齢者を対象とした活動です。西荻の街は「地域漸あ地で高齢者を見守っている」という言葉を聞いて、西荻在住の私は嬉しくなりました。このマップは、89のお店をまとめ、どこに行けば高齢者が相談できるかが一目瞭然化されています。

子ども食堂は、井荻小学校での夏休みの活動が紹介されました。大学生が一緒になってお料理を作り提供するという活動は、とても意味のあることであり、地域住民にとっても学ぶことの多いものと言えます。こうして高齢者と子ども達との活動を始めた大学生は、次に3世代が集える地域活動の必要性について考えました。

「西荻みなみ」を中心としたハロウィンのイベントには、地域の方々と一緒に活動をし、当日は200人の子ども達も来たと言います。こうした活動自体すばらしいですが、より地域社会に入り込み、継続性のある物になっていくことを願っています。大学生の活動を通して、「地域の人同士が、名前で呼び合えるような関係」を一緒に作っていけたら、どんなに良いかしれません。

■中央大学チーム:防災のニューノーマル~地域に新しい「繋がり」を~

八王子市にある中央大学のチームは、多摩川の氾濫を契機に、「防災における外国人」のことを真剣に考えました。そして、言葉の壁もさることながら、むしろ「情報の分かりにくさ」「周りの人に対して頼りにくいこと」が課題であることに気づきました。

情報が一方的な性質を持つものであることから、まずは、日常的な繋がりをつくることが大切であると考え、さらに発展して「防災で人と繋がれるアプリ:バーチャル東京」を提案することになりました。

広場があり、そこに人々が集い、チャット機能、掲示板機能、避難場所マップ機能、ライブ配信機能等、さまざまな便利な機能がついています。ユニークなアプリの提案に対して、審査員からは「どうやって効果的に広げるのか」「広告表示で企業のメリットを考えてはどうか」等々質問・意見が出されました。実現できるといいですね!

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若者達の発想にはオリジナリティがあり、社会の問題を新たな視点で捉えようとしている点、素晴らしいと思いました。どの発表も、チーム内、周りの人々との対話があり、それを東京都に提案という形でまとめてのプレゼン、大学生のエネルギーに感動した1日でした。

会場は東京フォーラム

プレゼンコンテストに一つ注文を付けるとすると、開催趣旨「都内大学生が提言することで、都民の多様性の尊重への関心を深める」についてです。これが趣旨に書かれているのですから、こうしたプレゼンをもっと多くの人々が知ることができるような工夫が必要ではないでしょうか。YouTube公開にして、多くの人に知らせるなどが出来るといいと思いました。一般が難しければ、限定公開としたり、また、長期が難しければ「期間限定」としたり、いろいろ工夫は考えられると思います。そんなことを考え、少しでも各チームの提案を、広く伝えたいと考え、記事にしました。

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