全投稿

ご紹介:修士論文(内山夕輝氏)「日本に在住するブラジル人の日本語学習動機~母語での生活が可能な環境において~

先月、内山さんのフェイスブックに、以下のような【ご報告】が出ました。

【ご報告】

拙稿「日本に在住するブラジル人の日本語学習動機 -母語での生活が可能な環境において-」が、東京外国語大学学術成果コレクションの推薦公開修士論文に収録されました。

正確に言うと、少し前からされていたのですが、すっかりご報告しそびれておりました。すみません。

このテーマは私が浜松で日本語教育に関わり始めてから、ずっと調べたいと思っていたものです。

分析は甘いところがあると思いますが、本文に収録されているインタビュー協力者の方々の言葉には重みがあり、彼らの語ってくれた生活からは、日本の外国人受け入れ政策の歪みが感じられることと思います。

ご関心いただける方がいらっしゃいましたら、お手にとっていただけますと幸いです。

最後に、私の拙い修士論文を推薦してくださった指導教官の菅長理恵先生にこの場を借りて御礼申し上げます。

http://repository.tufs.ac.jp/handle/10108/117310?fbclid=IwAR0i4JuTDvQ-BCDk2d6jrKXjrMDFosnO-H-t0Q8EtESuqpNFg9duJ7wMuPM

以前から「拝読したい」と思っていた私は、早速ダウンロードして読み始めました。そして、ぜひ多くの方に読んでいただきたいと思い、内山さんに許可を頂き、サイトにてお知らせを出すことにしました。また、内山さんが活動し続けていらっしゃる「浜松国際交流協会」のこれまでの流れについてもお伝えしたいと思います。

内山さんは、2006年より浜松国際交流協会(HICE)に勤務され、現在も浜松市の地域日本語教育に「総括コーディネーター」として取り組んでいらっしゃいます。これまでにもいくつもの報告書を作成し、調査を行っていらしたのですが、ご経験や知見を生かし、より包括的に、多層的に現状を捉え直し、論文としてまとめたいと考えられ、仕事を続けながら大学院修士課程を終えられました。

浜松市は、1989年3月にはブラジル人は146人でしたが、改正入管法が出た翌年3月には1,457人、1992年3月には4,572人と急増し、現在(2022年5月)は、9,453人となっています。こうした中で、市は多文化共生や日本語教育に関して、さまざまな取り組みを進めてきました。そこで走り続けた内山さんだからこそ見えること、さらには、4人の協力者へのインタビューを通して、貴重な「当事者の声」を聴くことによって分かったことをもとに、考察を進められました。

内山さんと私との出会いは10年以上も前になりますが、ずっと浜松国際交流協会の文化庁委託事業などでご一緒してきました。そして、常に、内山さんの活動から刺激を受けてきた一人です。

どうぞ皆さま、この論文をお読みいただき、日本に暮らすブラジル人の方々にとっての日本語の学びに対する思い、アイデンティティ等々、さらには、コミュニティづくりのあり方等について考えるきっかけにしていただければ、幸いです。

では、「第6章 終わりに」を引用して、紹介記事を終えたいと思います。

 日本が描く多文化共生社会とは何だろうか。これまでは、日本語学習支援と多言語による支援がバランスよくなされた社会が理想図として描かれてきたように思われる。しかし、外国人の定住化は現在進行形で進んでおり、様々な社会文化的要因が複雑に絡み合いながら、現地語であり、かつ生活言語でもある日本語が目標言語化されていない社会がパラレルワールドのように垣間見えてしまった。「定住化」は単に時間の経過を表す言葉ではない。これまでのような課題解決型の施策ではなく、今後は、異なる文化・言語・背景を持つ人々との共生をさらにリアルに想定した未来思考型の施策が求められるのではないか。筆者は、日本語教育の端に所在するものとして、今後も多文化共生のための日本語教育を追求していきたいと考えている。本研究が未来の浜松で見られる当たり前の多文化共生のきっかけになっていることを望む。

【参考資料】

★本論文に出てくる「浜松市における地域日本語教育の総合的な体制づくり推進事業:地域日本語教育実態調査【調査結果報告書】は、次のURLからダウンロードすることができます。

https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/documents/89888/202002hamamatsushi_chiikinihongohoukokusho.pdf

★「文化審議会国語分科会日本語教育小委員会(第112回)」(2022.6.21実施)の資料④において「浜松市の日本語教育施策」「生活者のための日本語教育―浜松における地域日本語教育実践―」がアップされています。

https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/nihongo/nihongo_112/pdf/93725301_04.pdf

TOP