現場から

「国際&青少年」という二本の軸で活動する「つづきMYプラザ」を訪ねて

9月から10月にかけて横浜市都筑区にある「つづきMYプラザ(以下、MYプラザ)」主催の「日本語ボランティア入門講座」を実施しました。いろいろな日本語教室の研修を担当してきましたが、<オンライン2回+対面1回>という形式は初めてでした。それは、「対面でやりたいけれど、オンラインにも慣れておくことが、ボランティアさんが活動を始める際に、すんなり入ることができる」ことを狙ってのことでした。

       林田館長とご一緒に

こうして最終回は、MYプラザにお邪魔し、1.嶋田の講義&ワークショップ、2.学習者の方々のスピーチと対話、3.代表者による「日本語教室の説明とお誘い」の3本立てで行われました。研修会終了後、林田館長からMYプラザならではの、さまざまな取り組みについてお話を伺うことができました。

■「国際&青少年」という2つの機能を持つMYプラザ~全スタッフが両方の事業に関わる

MYプラザが誕生したのは、2007年11月のことでした。センター北駅近くに「ノースポート・モール」が出来ることになり、その中に公共施設を入れることが話し合われました。そこで出てきたのが、「地域に暮らす外国の方も、中高生も気軽に立ち寄り、対話を重ねることができる場」づくりでした。つまり、国際交流ラウンジと中高生の居場所という2つの側面を持つ<みんなの居場所>づくりです。

横浜市を見るかぎり、この2つの機能を持つところは、他にはありません。特に、MYプラザの特徴は、全スタッフがこの2つの事業に関わり、重ね合わせながら進めていることです。大変ではありますが、2つの軸があるからこそ、よく見えてくることもあり、その重なりから「外国につながる子どもの学習支援」も生まれたのです。

こうして「都筑多文化・青少年交流プラザ」が誕生しましたが、愛称「つづきMYプラザ」は、翌年、区民の公募によって決まりました。MYのMは<Multicultural>、Yは<Youth>を意味しています。MとYに関する説明は、「広報よこはま 2017年11月号都筑区版」に、次のように記されています。

  https://www.city.yokohama.lg.jp/tsuzuki/madoguchi-shisetsu/riyoshisetsu/myplaza.files/0002_20181108.pdf

★国際交流ラウンジ機能~外国人を支援します~

大人のための日本語教室や外国につながる子供のための学習補習教室、多言語による生活情報の提供・相談、国際理解・交流イベントなどを開催しています。

★青少年の地域活動拠点機能~青少年を応援します~

仲間や地域の大人との交流・体験、青少年による企画運営のサポート、音楽・ダンススタジオ・ラウンジなど気軽に集える場を提供しています。

    

■「はぁとdeボランティア」中高生のための夏休みボランティア体験~地域とつながり、地域でつながる~

中高生のボランティア体験は、MYプラザがスタートした翌年2008年より、都筑区社会福祉協議会との共催で始まりました。2016年からは、「小学校5・6年生向けプレコース」もスタートしました。それ以降ずっと続けられ、冊子「令和3年度事業」を見ると、以下のように記されています。

    体験先 延べ1,210か所     

体験した子どもたち 延べ2,887人

コロナ禍の2021年度を見ても、多くの小中高生が参加していることが分かります。

    高校生    97人   

    中学生       112人   

    小学生    101人

早速「中高生のための夏休みボランティア体験先一覧」を見てみましたが、さまざまなコースがあり、自分が関心のあるコースを選ぶことができるようになっています。さらに、中高生が小学生や幼児のために活動するケースもいくつもありました。

  東山田中学校コミュニティハウス

    *小学生対象の「ペーパークラフト講座」の補助をお願いします。

    *小学生とその保護者を対象にした「天体観測」での天体望遠鏡の設営と観測の支援をお願いします。

  まんまるプレイパーク

    *赤ちゃんからお年寄りまで集える、地域のあそび場。

     遊具を準備したり、プレイパークに来た子どもたちと一緒に遊びましょう!

■中高生が企画運営する「STEP UPプログラム」~「参加」から「参画」へ~

このボランティア体験の素晴らしいところは、参加した中高生の中から希望者が集って次年度の「はぁとdeボランティア」プログラムを、1年かけて企画し創り上げていくことです。令和3年度の事業では、具体的には、1.防災班、2.障害班、3.子ども班、4.病院班の4つに分かれ、準備が進められました。案を出し合う、プログラムを決定する、体験先と話し合う、チラシを作成する……たくさんの仕事が待っています。それを地域の仲間と一緒にやっていくことは、貴重な体験です。

このプログラムの魅力について、経験をした中高生からいろいろな意見が寄せられています(「令和3年度事業」)。その中から、いくつか紹介したいと思います。

  *年齢が違う人とも同じ目的で頑張れて楽しい。学校では学べないことがある。

  *相手がどのような人かなど、相手を思う気持ちを深く知る事が出来ると思う。活動で得た経験はなかなか得ることができないものだと思う。

  *グループで1年間にわたってプロジェクトをするのが楽しかった。特に色々な課題を仲間と克服していくのがとても楽しかった。

  *小さい子どもが楽しめるように、話し合いながら皆で協力した。小さい子目線で

   考えた。

  *意見出したりまとめたりして自分のためにも人のためにも動けた。色々成長できた。

■「青少年が安心して集える場」としてのMYプラザ~「ふらっと行ける場所」のある幸せ~

小中高校生が参加する「はぁとdeボランティア」と「STEP UPプログラム」について紹介しました。「青少年の地域活動拠点」としてのMYプラザは、以下のような2つの場・機会を提供しているのです。

    *安心して集える場所の提供

    *はぁとdeボランティアをはじめとする体験機会の提供

ここでさまざまな体験ができるだけではなく、日常的に「安心して集える場」として存在しています。自習しに来る人、スタッフの方に相談したくて来る人、友達とお弁当を食べにくる人……。さまざまな中高生がふらっと訪ねて来ることができる場なのです。子ども達にとって気軽に相談できる人がいるのは、とても幸せなことであり、特に、外国につながる子どもさん達にとっては、ことばの壁から親に相談できないことをここでじっくり話すこともできます。

 「アフリカかるた」が長い廊下にたくさん貼って

最近では、外国につながる子どもの学習支援が大きな課題になっているそうですが、学校がお休みの期間「KANJIクラブサマーコース」を開き、補習をし、「居場所づくり」としても使われていたそうです。KANJIクラブとは、毎週土曜日の午後、公立の小中学校に通う外国につながる子どもたちのための学習補習教室です。

 

■「国際」と「青少年」の2つの軸が生んだ「外国につながる子どもの日本語支援」~学校、保護者、MYプラザによる連携~

今、MYプラザが力を入れているのが「外国につながる子どもの日本語支援」です。「国際」と「青少年」という2つの軸で、地域と一緒に活動を続けてきたことが、強みとなり、新たな力となっていきました。とはいえ、最初は地域にある小中学校とつながることは、大変でした。学校と良い形でつながりたいという思いから新たに作ったのが「外国につながる子どもとともに~考えるヒント~」という小冊子でした。

林田館長は10年以上も前のことを思い出し、次のように語ってくださいました。

あの頃は必死でした。でも、だんだん学校の方々も分かってくださるようになりました。最初私達が持っていった冊子は、<小中学校教員の皆さまへ>でしたが、学校の先生から「学校には教員だけでなく職員の方もいらっしゃいますよ。<教職員の皆さまへ>にしましょう」とアドバイスを受け、直したりしました。

こうして人間関係ができ、今では、都筑区にある「小学校22校、中学校8校」としっかりつながっているそうです。

■横糸と縦糸でつながるボランティア教室の魅力~みんなで考える教室、町、地域づくり~

実は、7年前に「つづきMYプラザ」に伺った時にも、林田館長からじっくりお話を伺いました。その時は、「区内にある日本語教室が、しっかりと連携し、定期的に会合を持っているとは素晴らしい!」と、連携と協働を軸にして記事を書きました。

    横糸でつながるボランティア教室をめざす「横浜市つづきMYプラザ」

      http://www.acras.jp/?p=4787

そのすばらしい特徴は、今もしっかりと続いていました。今回の第3回研修会には各グループの代表が見え、ご自分の教室を説明し、お誘いをしていらしたのですが、皆さんが他のグループへの誘いにも言及していらしたのには感動しました。

    「ぜひ見学にいらしてください。でも、うちの教室だけではなく、ぜひいろんな教室を見て、

     ご自分に合ったところを見付けて活動を始めてください。」

             ♬    ♬    ♬

お別れのご挨拶をして廊下に出た私は、「アフリカかるた」を見てびっくり!54枚のかるた、そして、国旗弁当がずらりと飾られていたのです。どこかひと味違うラウンジ、とても印象的でした。

参考記事:/ https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/koho-kocho/kocho/mayor-syukai/kaisaikekka/20220815141157386.html

TOP