今日3月23日に、フェイスブックにて近咲子さんのメッセージを目にしました。「修了生代表挨拶の抜粋を拝読して、感動! 「こんな大変な状況の中で、みごと大学院を修了なさったのだなあ」と、胸がいっぱいになりました。
実務教育学修士の学位を取得しました。
名誉なことに、実務教育研究科の修了生代表として答辞を述べる機会を頂戴しました。仲間たちの状況、そして私自身の体験をストーリーとしてお伝えました。そうしましたら、別の研究科の方々を含む多くの院生から、「私の物語だった」と言っていただきました。
この2年間の体験を、まさに修了生の代表としてお伝えした私の物語を、一部抜粋して共有致します。皆様、ありがとうございました。……後略
そこで、「答辞の全文を読ませていただきたい」とお願いメールを差し上げました。読み終えた私は、「これはぜひ多くの社会人大学院生に読んでいただきたい!」と考え、アクラスの記事として発信できないか、近さんにお尋ねしました。働きながら大学院に通うことの大変さをいろいろ聞いていることから、「近さんの答辞」は、そういった方々にとって大きな励ましになると考えたのです。さっそく近さんからご快諾をいただきましたので、ご紹介いたします。
ちなみに、私と近さんとのご縁は、放送大学の面接授業にあります。「多文化共生と日本語教育」という授業を受講してくださり、そこでお会いすることができました。いつも真ん中の一番前に座って真剣に聞いてくださっていた姿が今も目に浮かびます。そして、休憩時間にアレコレお話ししたことも良い思い出です。
では、どうぞ近さんの答辞をご覧ください。
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2024年度学位授与式
実務教育研究科 修了生代表挨拶

東京では、今日明日にも桜が開花します。美しい春がやってきました。
このような麗しい日に、東理事長、吉國学長を始め多くの皆様のご臨席を賜り、私たちのために素晴らしい学位授与式を開催くださいましたことに、心より感謝申し上げます。
私たちは社会構想大学院大学で2年間学び、探求したことへの誇りを胸に、本日新たな未来に向けて歩みを進めます。この日を迎えられましたのは、ひとえに研究科長の川山竜二先生始め諸先生方の、厳しくも温かいご指導の賜物です。先生方は、私たちに高いレベルでの思考を挑むと同時に、ひとりひとりに寄り添い、伴走してくだいました。改めて、お礼申し上げます。事務部門の皆様には、日々の細かい問い合わせにも丁寧に対応いただきました。皆様の支援があったからこそ、私たちは大学院での学びに集中することができました。ありがとうございました。また、院生の仲間たちとは、共に悩み、共に喜び、励まし合って研究に向き合いました。共に歩んだことで生まれた仲間意識と固い友情に、感謝いたします。
社会人大学院生の構造的な課題は、仕事のパフォーマンスを落とさずに時間を調整し、勉学に励むということにあります。仕事が普段以上に忙しくなり、研究の時間が取れなくなり四苦八苦した仲間もたくさんいました。このような困難を乗り越えて、本日この日を迎えられた方々には、深い尊敬の念を抱きます。さらに、社会人ならではの困難もありました。意に染まぬ異動を命じられて、研究テーマと業務が合致しなくなり方向性に悩んだ方、院生自身が体調を崩し論文執筆の時間確保が困難になった方、あるいは、家族に変化や困難があったという方もいらっしゃいました。
私自身も、このような予想外の困難が立ち現れたひとりです。論文執筆の道が始まった二年次の昨年春、頼りにしていた息子が日本を離れ、インドに移住してしました。寂しさで身体が震えそうになることもありました。そんな時、自分をこんな風に叱りました。
「空の巣症候群に陥っている場合じゃない!寂しがる前に、リサーチクエスチョンだ!」
夏には夫の難病が進み、介護レベルが上がりました。仕事と学業をどうやって続けるのだ、という不安がよぎりました。そんな時には、こんな風に励ましました。
「まだ来ない未来を心配しても仕方ない。今やるべきことは、何だ?先行研究だ!」

そして秋。中間審査会を経ていよいよ論文ロードが目の前に広がってきた時、今度は娘が精神的な不調に陥り、働けなくなってしまいました。どんな風にサポートすればよかったのだろう、と自分を責めたい気持ちになりました。そんな時は、過去は変えられない、と言い聞かせました。そして「明日のジョー」よろしく叱咤激励したのです。
「書け!書くんだ、コン!」
こうして訪れた冬、論文は完成しました。その時気づいたのです。これが、私の杖になっていたのだということに。自分が伝えたいことを考え抜くこと、探求したことを論理的に整理し、アウトプットすること。先生方に導かれたこのプロセスを通して、感情の波に流されず、不安に押しつぶされず、「今、ここ」に集中する術を会得したのです。これこそが、頭を上げ前に進むための杖になっていたのでした。
そして今、再び春がめぐってきました。この春の私たちは昨年とは異なります。社会構想大学院大学で学びという杖を手に入れた私たちは、学び続ける人『ホモ・ディスケンス』なのですから。この杖を手に、私たちは旅立ちます。旅の先に広がる道はそれぞれ異なれど、学びという杖の力をさらに多くの社会人に伝えたいという気持ちは、皆、同じです。実践と理論を融合させるこの強力な杖を、ひとりでも多くの社会人に手にして欲しい、そのために自分たちができることに取り組んでいきたい。この強い想いを胸に刻んでおります。
最後に改めて、ご指導くださった先生方、支えてくださった事務部門の皆様、そして温かく見守ってくれた家族や関係者の皆様に、心からの感謝を申し上げます。皆様のご健勝と、学校法人先端教育機構、社会構想大学院大学の益々の発展をお祈りし、修了生代表の挨拶と致します。
2025年 3 月 22 日
実務教育究科 第3期
修了生代表 近咲子