今年もイーストウエスト日本語学校では、学内俳句コンテストを行いました。約30年間続いている俳句コンテストですが、今回は、選句数は497、これまでにない多さでした。ご近所にあるお店やお住まいの方々、区役所、消防署、国際交流協会など、実にさまざまな方がご協力くださいました。
イーストウエスト日本語学校の先生方はもちろん、ご家族も選句に関わってくださいました。なかには、まだ字が読めない幼稚園の子どもさんに、俳句を読み上げて「どれが一番好き?」と聞いて家族全員で選句してくださった方もいらっしゃいました。また、海外で日本語を学んでいる大学生からもたくさんの選句とコメントをいただきました。こうした「つながり」がさらに深まっていくといいですね。
私は、今回初めてグーグルフォームを使ってフェイスブックでお願いをしたのですが、その結果155件という数の選句が届きました。温かいメッセージを添えて書かれていて、皆さまの留学生の俳句への共感に感謝しながら、読ませていただきました。
では、選ばれた句をご紹介いたします。初級クラスの学生さんの句もあれば、上級クラスの学生さんの句もあります。どんなレベルでも、その人らしいすてきな俳句が生まれます。
第1席 仰ぎ見る 異なる国も 同じ月
李詩蕊さん(中国)
第2席 月見ます お酒飲みます 一人きり
ガリブリ ヌルランさん(アゼルバイジャン)
第3席 渡り鳥 南へ飛んで 月を切る
王茜さん(中国)
また、今回は、中野消防署にご勤務の方々が大勢選句をしてくださり、コメントも付いたエクセル一覧表が送られてきて、イーストウエストの教師は感動!こうして地域社会との輪が広がっていくことは嬉しいかぎりです。杉本署長からいただいたメッセージをご紹介させていただきます。
どの句も素晴らしくてびっくりしました。異国で頑張っている皆さんに心からエールを送りたいと思います。
入賞作品に対するコメントは、どれも素晴らしく全てご紹介したいところですが、それぞれに4つずつご紹介させていただきます。
コメント
第1席
*異国にいても見える月は一つであり、世界は一つという意味があるのではと感じました。各国で紛争が頻発してい ますが、心を一つにすれば、争いごとも無くなるのではないでしょうか。
*この俳句は台湾のことわざとちょっと似てると思います。だからなんとなくの親近感が増えました!どこでも月が見えるよう、故郷のことを思い出すと思います。
*異国で暮らし、自国との違いに寂しさを感じてふと仰ぎ見た月が、故郷にいたときと変わらず見つめてくれていたときの感情と情景がはっきりと心に浮かぶ句だと思います。私もまた、同じように留学した経験があり、同じように月に背中を押されたことがありました。
*故郷を想う哀愁が感じとられると共に、「これから頑張るぞ」という決意も読みとれる良い作品だと感じました。
第2席
*秋の夜長の静寂さや孤独さを巧みに表現できていると思いました。一人盃を傾けながら、美しい月を見て、何を考えていたのか、気になってしまうくらい情景が浮かぶ一句だと思います。
*短歌ではすでにありますが、俳句を「話しことば」で詠んでいるのが新鮮です。心境も分かりやすくて率直なところがいいなと思いました。たまにはひとりもいいと思います。 笑
*きれいな月とおいしいお酒で満足だけど、一人はちょっと寂しいな…という意味かなと思いましたが、一人で月を 見ながらお酒を飲むのが幸せなんだ!という意味もあるなと思いました。シンプルですが深い句ですね。本当はどちらの意味で作ったのでしょうか。
*月も一つ、自分も一人で空に浮かぶ月に向き合って静かにお酒を飲む情景が浮かびます。お酒は何を飲んでいるのかな、月はどの角度から見ているのかな、など想像させられます。
第3席
*月を切るという表現が私には新鮮で、しかもイメージしやすく、美しい情景が目に浮かびました。
*渡り鳥が飛び立つ様子が思い浮かべられます。私でも「月を切る」という素敵な表現はなかなか出てこないと思います。
*渡り鳥が目の前から飛んで行くような景色を想像できます!本当に美しい俳句だと思います。それに、「月を切る」も素敵だと思って、そんな景色が見たいです。
*食べ物を求めるという目的のために渡るということと、その時期のホームとなる場所へ渡るという鳥が、留学生と重なる気がして、それを万国共通の月が見ているという風景を思い浮かべながらよみました。とても深みを感じました。
最後に、第1席、2席、3席となった句の作者の思いをお伝えいたします。
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