現場から

報告記事:多文化共生セミナー「やさしい日本語×ラップ、2年後の今」

2023年9月29日に、多文化共生セミナー「やさしい日本語×ラップ、2年後の今」が実施されました。一昨年ラップミュージック動画「やさしい せかい」を作成してから、1周年、2周年と趣向を変えながら、仲間を中心にセミナーをやってきました。今年のセミナーの概要は次のとおりです。

日時:2023年9月29日(金)17:45-19:15

プログラム:
第一部 MV制作関係者によるトーク
17:45-17:50 開会挨拶
17:50-18:00 プロデューサーと監督の視点  

    小澤雅人(映画監督)& 吉開章(やさしい日本語ツーリズム研究会)


18:00-18:10 出演学生の今「二年後に思うこと」 


第二部 リレートーク:各地の最新実践報告(敬称略)
18:15 平田春奈「静岡県」 *資料
18:20 村田陽次「東京都」
18:25 ダン・チュンフン「神戸市」
18:30 加藤理絵「名古屋市」 *資料
18:35 親松雅代「株式会社メルカリ」 
18:40 吉開章「やさしい日本語普及連絡会」 *資料
18:45 山脇ゼミの取り組み *資料
18:50 国の取り組み
18:55 嶋田和子「総括」 
19:00 質疑
19:10 閉会挨拶
19:15 閉会

詳しい内容に関しては、明治大学山脇ゼミのサイトに載っていますので、そちらをご覧ください。

/https://www.meiji.ac.jp/nippon/info/2023/mkmht000000nd6ez.html?fbclid=IwAR2HBQk6Gb4oVsJBNYpvXsFGUAT1vKp2kODFu2-hacaNPkp5X3IrHZ1pV-U

この報告記事では、最後に私がお話をした「全体のコメント」の内容をお伝えすることにいたします。何人かの方から、「紹介された論文は、どこで見られますか」といったお問い合わせをいただきました。そこで、当日の録画から文字起こしをして内容を紹介し、また、柳田論文のURL、日本語教育学会の授賞理由などをご紹介することといたしました。

           🎵   🎵   🎵

多文化共生セミナーの録画を文字起こししたものです。また、最後に柳田論文のURLをつけました。

全体のコメント              

                                 嶋田 和子

多様な取り組みについてお話を伺いました。やさ日伝道師の旅をなさっている方、動画を色々作っているお話、また、東京都、国のお話もありました。そんな中で、共通のこととして、認知度アップをどうするかということがあります。私もいろいろな所で話をしたり、「やさしい せかい」を見ていただいたりしていますが、まだまだ認知度が上がっていないと感じています。

ということで1点目は、それぞれの取り組みをもっともっと広げていっていただく、というか、連携をしてただ発信じゃなくて、そこから何か協働するというところにもっていく段階にあると思っています。日本語教育でも、コンソーシアムを作って、拠点を作って、みんなで一緒にやっていこうという動きがあります。ということを考えると、みんなでやっていくということはとても大切だと思います。たとえば山脇ゼミでは、今までのことを踏襲しながらさらに新しい活動をなさっている。本当に素晴らしいと思いますが、それがもっと他の大学にも波及していったら、もっともっと大きな力になると今回も思いました。

2点目、言葉の問題だけではないというご発言がありましたが、本当にそうだと思います。そして、MAZさんからは今度日本語教育学会で発表なさるということもありました。そこで、私は日本語教育関係者ですので、ある論文をご紹介したいと思います。

実は、2020年度、早稲田大学の柳田直美さんが日本語教育学会論文賞を受賞されました。論文のテーマは、「非母語話者は母語話者の「説明」をどのように評価するか」です。「窓口対応での説明で、非母語話者から評価が高いのはどういうものか」ということに関する分析なんです。結論を言うと、やさしい日本語を使うことも大事だけれど、むしろ積極的な参加態度、そして相手に合わせた適切な説明だと明確に書いておられます。

自治体等の窓口対応においては、言語的調整の前に非母語話者に対する誠実な姿勢を意識することが重要である。

そして、日本語教育学会の授賞理由にもこう書いてあるんですね。

ともすれば言語的調整の技術論に偏りがちな「やさしい日本語」をコミュニケーションの文脈に戻す力を持っており、日本語教育関係者のみならず、すべての日本語母語話者に示唆を与えるものとなっている。

この視点はとても重要ではないでしょうか。そこで、今日皆さまにご紹介したいと考えました。

最後に強調したいことを4点述べさせていただきます。

1.原点を忘れないこと。何のためのやさしい日本語なのか。相手に対してわかりやすい言葉で語ることですよね。技術論に走ることは避けたいと思います。

2.さらに他領域・他分野との連携を図って、コラボレーションに進みませんか。

3.非母語話者の視点を忘れないこと。

4.母語話者が謙虚に、自分自身のコミュニケーション力を振り返ること(これは、日本語教師自身も同様)。

以上です。

  「全体のコメント」→  https://acrasweb.jp/wp-content/uploads/2023/10/全体のコメント.pdf

参考:

柳田直美(2020)「非母語話者は母語話者の「説明」をどのように評価するか―評価に影響を与える観点と言語行動の分析―」『日本語教育』177巻pp.17-30

/https://www.jstage.jst.go.jp/article/nihongokyoiku/177/0/177_17/_pdf/-char/ja

日本語教育学会 2020年度『日本語教育』論文賞受賞論文 <授賞理由&要旨>

/https://www.nkg.or.jp/.assets/sho_2020_jusho_ronbun.pdf

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